ボトックス注射は、額や眉間のしわの改善に有効な施術です。しかし、ボトックスにはさまざまな種類があるため「どれを選べば良いかわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ボトックスの種類や選び方のポイントを詳しく解説します。種類による違いや注意点もお伝えしていますので、ボトックス注射を検討している方はぜひ参考にしてください。

ボトックス注射とは

ボトックス注射とは、注射器を使用してボツリヌス菌由来のボツリヌス毒素を注入する美容施術です。製剤が神経と筋肉の接合部に作用し、筋肉の収縮を促す神経伝達物質「アセチルコリン」の放出を妨げることで、筋肉の動きを抑制させる仕組みです。

もともとボトックス注射は、まぶたのけいれんや顔面まひなどの治療法として、医療分野で活用されてきました。現在は美容目的としても広く使用されており、しわの改善やエラ張りの軽減、多汗症の治療などさまざまな分野で効果が期待されています。

ボトックス注射に期待できる効果

ボトックス注射に期待できる主な効果は、以下のとおりです。

  • しわの改善
  • 小顔効果
  • 多汗症の改善
  • 肩こりの改善
  • 歯ぎしりの改善
  • 花粉症症状の緩和

ボトックス注射には、筋肉の緊張を和らげる効果があります。この作用により、眉間や額などの顔のしわを改善する効果が期待できます。また、噛む力の大部分を担う咬筋の緊張を緩和することで、エラの張りが和らぎ、小顔効果を得られる可能性があります。

ボトックスは脇や手のひら、足の裏など多汗症の治療にも活用されており、汗の量を効果的に減らすことが可能です。美容目的だけでなく、医療分野でも幅広い悩みに対応できるため、多くの人々にとって有用な治療法といえるでしょう。

ボトックスの種類は1種類のみ

正式なボトックスの種類は、アラガン社が製造している1種類のみです。これは、アラガン社が「ボトックス」を商標登録しているためで、他社が製造するボツリヌス製剤にはそれぞれ異なる名称が付けられています。

アラガン社のボトックスは、1989年に米国食品医薬品局で安全性が承認された唯一の製品です。日本では2009年に厚生労働省に承認され、「ボトックスビスタ」という名称で販売が開始されました。

現在では、美容および医療の分野で広く利用されており、安全性と効果の面で世界中で信頼を得ている製品です。

ボトックス以外のボツリヌストキシン製剤

ボトックス以外のボツリヌストキシン製剤は以下の6種類で、世界各国で製造されています。

  • イノトックス
  • ボツラックス
  • リジェノックス
  • コアトックス
  • ボコーチェア
  • ニューノロックス

それぞれ解説します。

イノトックス

イノトックスは、韓国のメディストック社が開発した液体型の薬剤です。イノトックスには、以下のような特徴があります。

細菌感染のリスクが少ない
副作用のリスクが低い
効果持続期間が長い

ボツリヌストキシン製剤は粉末であるため、生理食塩水で薄めてから使用するのが一般的です。そのため、製剤を薄める過程で細菌感染するリスクがあります。しかし、イノトックスは液体であるため、細菌感染のリスクを低減できます。均一に注入しやすく、副作用のリスクが低いのも大きな特徴です。

ボツラックス

ボツラックスは、韓国のヒューゲル社が製造している薬剤です。ジェネリック薬品であるため、ボトックスと同様の効果が期待できるだけでなく、他の薬剤より低価格で利用できる点が特徴です。

韓国食品医療品安全処に承認されており、安全性も保障されています。効果と安全性が認められたことで、日本やアメリカ、東南アジアなど世界中で使用されています。

リジェノックス

リジェノックスは、韓国のヒューゲル社が製造・販売しているボツリヌストキシン製剤です。ジェネリック医薬品として開発された製剤で、韓国ではボツラックス、海外ではリジェノックスとして販売されています。

韓国食品医薬品安全処の承認を受けているため、安全性も高く世界各国で使用されている薬剤です。比較的低価格なので、気軽に治療を受けやすいのも特徴です。

コアトックス

コアトックスも、韓国で製造されている薬剤の1つです。メディストック社が製造しており、以下のような特徴があります。

  • 効果が落ちにくい
  • 副作用のリスクが低い
  • 安全性・有効性の両面で保証されている

一般的なボツリヌストキシン製剤は、繰り返し使用すると体内で抗体が形成され、効果が徐々に薄れることがあります。しかし、コアトックスは不要なタンパク質を含まないように精製されているため、抗体ができにくく効果が持続しやすいのが魅力です。

ボコーチュア

ボコーチュアは、ドイツのメルツ社が製造している薬剤です。通常のボトックスに比べて、タンパク質の量が少ないため、繰り返し使用しても効果が維持されやすいのが特徴です。

また、2011年にアメリカ食品医薬局の認可を取得しているため、安全性も安全性も保証されています。ボツリヌストキシン製剤を長期間使用したい方や、他の製剤で効果が薄れてきたと感じる方に最適な選択肢といえるでしょう。

ニューノロックス

ニューノロックスは、韓国のメディストック社が製造および販売している薬剤です。ジェネリック医薬品に相当するため、低価格で治療を受けられます。

また、2006年の発売以来、安全性と有効性が評価され世界29か国で承認されているのも特徴です。安全性が高く、コストパフォーマンスに優れていることから、美容医療の分野でも幅広く活用されている薬剤の1つです。

ボトックスの種類による違いは何?

ボトックスの種類による違いに大きな差はありませんが、それぞれの違いを把握することで、治療の選択肢が広がり最適な薬剤を選びやすくなります。ここからは、ボトックスの種類による違いについて詳しく解説していきます。

国内での承認の有無

ボトックスには、国内で厚生労働省の承認を受けているものと未承認のものがあります。国内で正式に承認されているのは、アラガン社の「ボトックスビスタ」のみです。厚生労働省による厳格な審査をクリアしており、安全性と有効性が保証されています。

未承認の薬剤は国内での使用が制限されていますが、医師が個人輸入したものを適切な管理のもとで使用することは可能です。未承認のものを使用する場合は、使用する薬剤の特徴やリスクについて、施術前に医師としっかり相談することをおすすめします。

値段

ボトックスの価格は、種類やクリニックによって異なります。国内で承認されているアラガン社の「ボトックスビスタ」は、安全性や効果が保証されている分、値段も高額な傾向にあります。

一方で、韓国製やドイツ製のジェネリック医薬品に相当するボツリヌストキシン製剤は、低価格で提供されることが多く、コストパフォーマンスに優れているのが特徴です。値段だけでなく安全性や効果も考慮しながら、自分に合った薬剤を選択することが大切です。

安全性

ボトックスの安全性は、薬剤の種類や品質管理の基準、使用する医師の技術によって大きく異なります。

厚生労働省の承認を受けているアラガン社製の「ボトックスビスタ」は、厳格な審査をクリアしており、安全性と有効性が保証されています。そのため、リスクを最小限に抑えたい方には最適な選択肢です。

一方で、海外性の薬剤は日本では未承認のため、安全性の保証は医師やクリニックの管理に委ねられます。未承認の薬剤を使用する場合は、信頼できるクリニックを選ぶことが重要です。

持続期間

一般的に、ボトックスの効果は約3〜6か月持続するとされていますが、使用する薬剤によって持続期間は異なります。国内承認の薬剤は、厳格な品質管理のもとで製造されているため、安定した効果が期待できます。

一方、ジェネリック医薬品は製剤の精製度や成分の違いにより、持続期間がやや短くなる傾向があります。より長く効果を維持したい場合は、施術間隔を守り信頼できるクリニックで施術を受けることが大切です。

治療対象の範囲

ボトックスは、種類によって治療対象の範囲が異なるため、目的に応じた薬剤を選ぶことが重要です。たとえば、ボトックスビスタは額や眉間、目尻のしわの改善に使用されることが多いです。一方で、ボコーチュアは表情じわの改善やエラボトックス、小顔治療などに適しています。

ジェネリック医薬品であるボツラックスやニューロノックスは、国内では未承認のため、主に美容目的で使用されています。安全性や持続期間、コストパフォーマンスなども考慮しながら、自分に合った薬剤を選びましょう。

抗体の発生確率

ボトックス治療を継続的に受けると、体内で抗体が作られる場合があります。抗体ができると、ボツリヌストキシンの効果が弱まったり、効かなくなったりすることがあるため注意が必要です。

抗体の発生確率は、薬剤の種類や施術の頻度、投与量によって異なります。一般的に、タンパク質を多く含むボトックスは抗体ができやすいとされています。

一方、ボコーチュアやコアトックスなど低タンパク質設計の薬剤は、抗体ができにくいです。抗体ができにくい製剤を選ぶことで、ボトックスの効果を長く維持することできます。

ボトックス以外の薬剤を選んでも問題ない?

基本的には、ボトックス以外の薬剤を選んでも問題ありません。どの薬剤を選んでも、効果や持続期間、安全性に大きな差はないとされています。ただし、製剤ごとに特徴があるため、施術の目的や個人の体質、予算に応じて最適なものを選ぶことが大切です。

薬剤選びに迷った場合は、まず医師に相談しましょう。体質や施術目的、希望に合った薬剤を提案してもらえるため、より安心して治療を受けることができます。

アレルギーの有無や過去の施術歴、副作用のリスクなども考慮しながら選ぶことで、より安全性を高めることができるでしょう。

ボトックスの種類は途中で変えられるのか

ボトックスの種類は途中で変更することが可能です。薬剤を切り替えても抗体ができたり、効果が薄れたりするリスクはないとされています。

たとえば、特定の薬剤で副作用が発生した場合、使用を継続することが難しくなることがあります。そのような場合は、副作用のリスクが低い製剤に変更することで、治療を続けられる可能性が高いです。

また、繰り返しの治療により効果が弱くなるケースもあります。この場合は、別の製剤を使用することで、再び効果を実感できることがあります。

薬剤の種類を変更する際は、自分の体質や希望する効果に合わせて、医師と相談しながら適切な選択を行いましょう。

安全にボトックス注射を受けるにはクリニック選びが大切

安全にボトックス注射を受けるためには、クリニック選びが重要です。医師の技術力や使用する薬剤の品質、クリニックの管理体制によって安全性や仕上がりが左右されるため、慎重に選ぶ必要があります。

日本形成外科学会の専門医や、ボトックス施術資格を持つ医師が在籍しているクリニックは、解剖学的知識を十分に理解していると判断できます。そのため、適切な注入技術で施術を行える可能性が高いです。

また、メーカーの正規販売ルートから仕入れ、適切な管理を行っているクリニックを選ぶことで、施術時の安全性が高まります。カウンセリングをうまく活用しながら、信頼できるクリニックを選びましょう。

ボトックス注射を受ける際の注意点

ボトックス注射を受ける際は、以下の点に注意が必要です。

  • 副作用のリスクがある
  • 効果を維持するためには継続的な施術が必要になる
  • すべての人が注射を受けられるわけではない

それぞれ解説します。

副作用のリスクがある

ボトックス注射を受ける際は、副作用のリスクがあることを把握しておきましょう。ボトックス注射には、以下のような副作用が起こる可能性があります。

  • 内出血
  • 腫れやむくみ
  • 頭痛
  • 吐き気やめまい

ただし、副作用は一時的なものであり、時間の経過とともに回復するのが一般的です。副作用が長引く場合は、早めに医師に相談し適切な処置を受けましょう。

効果を維持するためには継続的な施術が必要

ボトックス注射の効果を維持するためには、継続的な施術が必要です。ボトックスの効果は3〜6ヶ月程度で、徐々に効果が薄れていきます。継続的にボトックスを打つことで、効果を長く維持することが可能です。

術の間隔が短すぎると、体内で抗体ができるリスクが高まります。そのため、医師と相談しながら、自分に最適なタイミングで施術を受けることが大切です。

すべての人が注射を受けられるわけではない

以下の項目に該当する方は、ボトックス注射を受けられません。

  • 妊娠中または授乳中の方
  • ボトックス製品や成分にアレルギー反応を起こしたことがある方
  • 神経筋疾患を持つ方
  • 皮膚感染症や血液凝固異常を持つ方

特定の薬を服用している方も、ボトックス注射を受けられない可能性があります。安全性を確保するためにも、施術前のカウンセリング時に健康状態や服用中の薬について正確に伝え、施術可能かどうかを判断してもらいましょう。

まとめ

この記事では、ボトックスの種類や選び方のポイントを詳しく解説しました。

ボトックスにはさまざまな種類がありますが、どの薬剤を選んでも効果に大きな違いはありません。そのため、料金や持続期間、安全性などを考慮しながら、自身の希望に合う薬剤を選びましょう。

専門知識を持つ医師に相談することで、自身の悩みや体質に合う薬剤を選択でき、より安心して施術を受けられるでしょう。

足立 真由美
この記事の監修者 医療法人 涼葵会 理事長 足立 真由美
美容医療の豊富な経験から美容医療の枠を超え、東洋医学・アーユルベーダ等のホリスティック医療を展開。「美は健康な身体から」をテーマに、美容クリニックとは思えない多彩なアプローチで、最新の美を提供する。
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